本書執筆にあたり



私は20代後半で起業し、出だしはそこそこだったが…、リーマンショックでドンと落ち込んだ。
その後、気づいたら膨大な借金を抱え、やむなく自己破産…。


コンビニや宅配便のアルバイトを掛け持ちし、青色吐息の極貧生活のさなか、一念発起でジャーナリストの道を目指した。


一貫して、私と同様のワーキングプアの若い女性にスポットを当て、地べたを這いつくばりながらも、ささやかなオンリーハッピーをゲットするまでの姿を伴奏者のスタンスでつづりあげる…。
そんな執筆活動を地道に続けてきた。


無論、少なからず不運の連鎖の前に、正視できない悲惨な顛末を遂げる女性も見届けてきた。
そんな彼女たちの同意を得たうえで、究極のドツボ女子を伝えもしている。


今では女性週刊誌の連載枠を持ち、ネットで発信する場も得て、這いつくばる女のたくましき息吹で、格差社会の歪曲した厚い面の皮を撫で上げる意気込みだ。


...


そんなメインタッチの取材の傍ら、私は取材対象すべての人に”あること”を尋ねるのが習慣となっている。
それは、『あなたのお父さん、お母さんが体験したショッキングだった告白、信じられない事実を明かされたことはありませんか?』という問いだった。


子育て中には、子供に知られることをかたくなに避けてきた、過去に体験した真実の暗部…。
往々にしてそれは、過ちと後悔を内包する場合も多く、自らが年を重ね子供が成長し大人になった頃、おのずと自らの教訓を子に伝える告白の機は熟す。
そしてそれは、どこか自らの懺悔の念も同居させたものとして…。


その中には、世にも不思議な怪奇体験を孕むケースもまれにある。
実際に私もそのまれな体験を持った親から、ごく最近になって告白されたのだ。
本書挿入の第3話は、その私自身が、年老いた母から明かされた体験談である。


本書では私の取材対象だった女性から実際に聞き得た、そんな”親から明かされた怪奇懺悔談”をエッセイ調に編集し、まずは6話を収録してみた。





中里ミチヨ