その8



この日、大打ノボルは北陸路から帰還した直後だった。
バグジーとの接見報告等、諸事案を申し送りした後、ノボルは椎名に切り出した。

「それで…、”あっち”の動向はどうなんだ?新潟から電話した際は詳しく聞けなかったが、相和会、出張ってきたんだな?」

「ええ…。今朝ほども折本さんから電話で報告をもらったんで、ノボルさんが戻ったら真っ先に伝えようと…。だけど、”そちらへの確認”を先にしてしまった(苦笑)」

「じゃあ、椎名、早速頼む」

椎名は仕切り直しで話を始めた…。

...


「了解ですよ、ノボルさん。まず結果を端的に告げれば、”決着はもう見た”です」

「ってことは…、星流会の挑発に相和会は乗って、衝突は起きた。だが、双方の話は着いたと…。そういうことか?」

「まさにです。…電光石火の展開、終結だったそうです。でも、それを坂内さんと田代さんは読んでいたと…。折本さんはそう言ってました」

「そうか…。でよう、どんな合意で終わったんだ?相和会の出張りはよう…」

「はあ…、それなんですが…」

何しろ、ノボルは急いた。
興味を注がずにはおけない相和会…、いや、相馬豹一が今回とった行動の一部始終を一秒でも早く知りたかったのだ。


...

数分して…。
椎名のその言葉に、ノボルは驚愕していた…。

「なんだとー?…電動でちょん切った指を、トーシロのオレたちと同じガキへ運搬させたってか…⁉その愚連隊の雇い元、星流会へ…」

「そうらしい…。しかも現場では、その墨東会らのガキ数人を前にして、チョン切りを生ライブで披露だったそうです。その現場、相和会の根城である場末のスナックだったらしいが、狭くうす暗い店内は、指を削がれた男の絶叫と血の臭いでガキ連中の大半が気を失ったとか…」

ノボルは理屈抜きに興奮を抑えられなかった。
いくらヤクザもんと接点があっても、”クロート”ではない若者にも情け容赦のない、凄まじい拷問をも冷徹に挙行してしまうその度量…。

しかもその手法は、多分、相和会が意図的にチョイスしたであろう、よりシロート色の強いガキどもの”ギャラリー”に向けた劇場型の演出を添えるというエゲツなさ…。

”相馬は本当に気狂いだったか…!”

ノボルは無言でそう叫ぶのだった…。