その5
「…言うまでもなく、これは従来のやくざ予備軍、2次組織というような関係とは全く異なる、双方の立場を侵さず、相互のメリットを最大に享受しあえる斬新なスキームということだ。これより、我々はその連携体制に向けた下地、環境つくりを主眼に置いたアクションに入る。具体的なところは追って伝達するが、これからの工程においては、極めて重要なポジションを”演じて”もらう仲間を、今ここでお披露目したい」
その場の皆の反応は様々だった。
最年少のマキオなどは目をぎらつかせ、ノボルのこれから出る言葉を興奮気味に待ち受けてる表情だったが、ノボルの話を承知している椎名は至って平常を装った。
武次郎は目の前の料理を盛んに口へ運んで、意識的にノボルからは視線を外していた。
そして、ついにノボルの口からその名が飛び出す…。
「その人物の名は”通称タカハシ”だ。今、オレの左にいる男になる」
”ザワザワザワ…”
...
”ふふ‥、ノボルさんの狙いどこはストライクだったな。今さっきの紹介から間をおかずってのが、みんなには極めて強いインパクトを与えた。さらに、タカハシという存在、実態には微妙にぼかしを入れたところがミソだ。以後、対外的にデビューする通称タカハシには、そのことで行動幅を持たすことになるのだから…”
ノボルの真意を掌握していた椎名は、”予想通り”に皆が反応してくれたことで、これからのタカハシ暗躍が瞼に浮かぶようだった。
「では、タカハシよう、みんなに一言な…」
ノボルは左隣の三貫野にそう振った。
ニヤニヤ顔で…。
...
それを受けた三貫野のリアクションは、極めてノボルの意に沿ったものとなる。
それは”実直”な彼を表す、演技達者のなせる高レベルな芸当と言えよう。
「という訳で、通称タカハシの私です。再度ですが、よろしくということになります…」
そのアナウンサーのようなつややかな声、滑らかな滑舌で”もう一つ”のあいさつをさらりとこなす三貫野は、すでにツボを得た演じ分けを見事に完遂していた。
隣のノボルは、俄然、ニヤケ顔を消し去ることを止められなかった。
また、椎名は皆の反応に大げさ気味な苦笑を繰り返し、武次郎は相変わらずはしを離さず、ほぼ無表情を貫いている‥。
この4者4様の、素でありながらも計算されたリアクションは、チーム大打のシンボルコントラストとして、彼らのグループの遺す足跡にも色濃く添加されてゆく…。
...
除夜の鐘が鳴り出し、新たな年を迎えてまもなく、年またぎの会合は散会となった。
「三貫野さん…、いえ、タカハシさん…。その節は大変お世話になって…」
「ああ、亜里奈。こっちの水にも”いち早く”慣れたって聞いて安心したよ」
タカハシにとっては、三貫野ミチロウとして熊本から東京に逃したこの女も、一人のストックに過ぎない。
すでに東龍会幹部とくっついた件はノボルから告げられており、”彼女のページ”にその当該事項を追記するだけのことだった。
”それ”が、何らかの局面で使えればそれで良しとなる。
彼にとってはそこで完結ということであった。
...
翌年の元旦となった午前1時過ぎ…。
部屋にはチーム大打の幹部4人のみが残り、申し合わせを行っていた。
4人は確かに、今回の会合で大きな成果を得たと実感していた。
だが、その表情は総じて硬いもので、とても忘年会の2次会、新年会といった空気とはかけ離れていた。
「…じゃあ、ノボルさんは、自ら東京北部埼玉県境に入るつもりなんですね!」
ノボルは椎名の問いかけにゆっくりと頷いた。
彼はなんと、当初から自らが大打グループ進駐地に赴くことを明言したのだ…。
それはいきなりだった。
他の3人はちょっとあっけにとられ、交互に顔を見合わせるのだった。
「…言うまでもなく、これは従来のやくざ予備軍、2次組織というような関係とは全く異なる、双方の立場を侵さず、相互のメリットを最大に享受しあえる斬新なスキームということだ。これより、我々はその連携体制に向けた下地、環境つくりを主眼に置いたアクションに入る。具体的なところは追って伝達するが、これからの工程においては、極めて重要なポジションを”演じて”もらう仲間を、今ここでお披露目したい」
その場の皆の反応は様々だった。
最年少のマキオなどは目をぎらつかせ、ノボルのこれから出る言葉を興奮気味に待ち受けてる表情だったが、ノボルの話を承知している椎名は至って平常を装った。
武次郎は目の前の料理を盛んに口へ運んで、意識的にノボルからは視線を外していた。
そして、ついにノボルの口からその名が飛び出す…。
「その人物の名は”通称タカハシ”だ。今、オレの左にいる男になる」
”ザワザワザワ…”
...
”ふふ‥、ノボルさんの狙いどこはストライクだったな。今さっきの紹介から間をおかずってのが、みんなには極めて強いインパクトを与えた。さらに、タカハシという存在、実態には微妙にぼかしを入れたところがミソだ。以後、対外的にデビューする通称タカハシには、そのことで行動幅を持たすことになるのだから…”
ノボルの真意を掌握していた椎名は、”予想通り”に皆が反応してくれたことで、これからのタカハシ暗躍が瞼に浮かぶようだった。
「では、タカハシよう、みんなに一言な…」
ノボルは左隣の三貫野にそう振った。
ニヤニヤ顔で…。
...
それを受けた三貫野のリアクションは、極めてノボルの意に沿ったものとなる。
それは”実直”な彼を表す、演技達者のなせる高レベルな芸当と言えよう。
「という訳で、通称タカハシの私です。再度ですが、よろしくということになります…」
そのアナウンサーのようなつややかな声、滑らかな滑舌で”もう一つ”のあいさつをさらりとこなす三貫野は、すでにツボを得た演じ分けを見事に完遂していた。
隣のノボルは、俄然、ニヤケ顔を消し去ることを止められなかった。
また、椎名は皆の反応に大げさ気味な苦笑を繰り返し、武次郎は相変わらずはしを離さず、ほぼ無表情を貫いている‥。
この4者4様の、素でありながらも計算されたリアクションは、チーム大打のシンボルコントラストとして、彼らのグループの遺す足跡にも色濃く添加されてゆく…。
...
除夜の鐘が鳴り出し、新たな年を迎えてまもなく、年またぎの会合は散会となった。
「三貫野さん…、いえ、タカハシさん…。その節は大変お世話になって…」
「ああ、亜里奈。こっちの水にも”いち早く”慣れたって聞いて安心したよ」
タカハシにとっては、三貫野ミチロウとして熊本から東京に逃したこの女も、一人のストックに過ぎない。
すでに東龍会幹部とくっついた件はノボルから告げられており、”彼女のページ”にその当該事項を追記するだけのことだった。
”それ”が、何らかの局面で使えればそれで良しとなる。
彼にとってはそこで完結ということであった。
...
翌年の元旦となった午前1時過ぎ…。
部屋にはチーム大打の幹部4人のみが残り、申し合わせを行っていた。
4人は確かに、今回の会合で大きな成果を得たと実感していた。
だが、その表情は総じて硬いもので、とても忘年会の2次会、新年会といった空気とはかけ離れていた。
「…じゃあ、ノボルさんは、自ら東京北部埼玉県境に入るつもりなんですね!」
ノボルは椎名の問いかけにゆっくりと頷いた。
彼はなんと、当初から自らが大打グループ進駐地に赴くことを明言したのだ…。
それはいきなりだった。
他の3人はちょっとあっけにとられ、交互に顔を見合わせるのだった。



