大打ノボル、最終選択点”殺人コーディネート”に到達す…!
悪の研鑽③



”そうさ…。これからヨコハマ部隊が突き進むのは、ヒットマンの殺しを肩代わりする未成年者のストックに向けた切りだし、そして我々と同じ立ち位置の非やくざ連中との交わりだ…”

大打ノボルが何かに憑りつかれたように疾走している姿を、グループメンバーの中でもっとも敏感に感じ取っていたのが、この椎名彰利だった。

そしてこの男は、そのことを、自身への具体的な行動モチベーションとして直結させることができていたのだ。



”…とりわけ後者は、もともとオレ達が軽視していたパーツだった。まずはそれを自覚せねばならない。東龍会とのパートナーシップが青写真に乗っかった今現在となれば、同じフィールドの、いわば競争相手の”ガキ”組織とは切磋琢磨をおごそかにできない”

幼いころから大打兄弟とは一番身近で接してきた椎名は、ここに来て鮮明にズームアップされた自分の役割を完全掌握するに至ったのだろう…。

”遅まきながら、ガキの世界に等身大で飛びこんでいく…。それは、今までの俺達に足りなかった足腰の別筋肉を鍛えることにもなるんだ。来たるべき時期…、東龍会と本格的なアクションを起こす際となれば、必ずモノを言うさ。ノボルさんがホームグランドを留守にしてる間は、ここの部分でオレ達が下地をしっかり固めておかねば…”

椎名彰利はその胸の中で、大打グループがそれぞれの作業に同時着手させねばとの使命感をかみしめていた…。

...


マキオへの申し合わせをおよそ30分で終えた武次郎と椎名は、二人でのミーティングを再開させていた。

「…よし、当面はリトルブラック時代の視線に戻って、年少のガキへの関与を強めてそこから兄貴らのお家芸、マンストックだな。それを地道に着々とひっそりとな、フフ…」

最近では武次郎も、すっかり薄笑いが習慣になっていた…。

「そうだ。そこの切込みはマキオを前面に立てる。むろん、日々の動向はこっちに直接上げさせて、オレたちが正確に把握する。リアルタイムでな」

「おお、それは椎名とオレの二人で統轄し、随時目についたガキには直接接触して、実際にその目で確かめることを心がけよう。それの積み重ねがあってこそ、いざって状況で即応できる地ならしにもなるだろうからな」

「ああ、そこはこまめにやろうや。並行して、見込めそうなガキには積極的にその付き合いにあたってよう、輪と間口は常に広げていく。その日常行動の延長で、人が人を生む循環ができるしな…」

グループのかじ取りたる二人の密談はさらに続いた…。