大打ノボル、最終選択点”殺人コーディネート”に到達す…!
悪の研鑽②



生粋のハマっ子・大打武次郎と、熊本からの転校生椎名彰利…。
このシュチエーションを以って、小学校低学年で出会ったこの二人の間には、極めてベストバランスの距離感が成人した今も保たれていた…。

「…なあ、武ちゃん。とにかく我々としてはだ、ノボルさんの首尾を見ながら、こっちも並走して行かないと。マキオももうすぐここに来るだろうから、例の”募集”、具体的に方針固めて即着手に入ろうや。ノボルさんの”マンストック”のノート群は、熊本の三貫野の元に届いたそうだしな」

阿吽の呼吸を導くその距離感こそ、二人の程よい関係の根底を支えていたのだ。
この難しい局面でも…。

...


「ああ、あの膨大な人物録か…(苦笑)。なんでもよう、三貫野もおんなじもんストックしてたとかで、あの兄貴が感激してたってんだから傑作だわ、ハハハ…。それ、質量ともに兄貴のとは比較にならなかったそうだからなあ…」

「ミチロウはさあ…、その膨大な”人のストック”を重ね合わせれば、将来的にその中から必ず人と人が各種のラインで結ばれるってのが持論なんだよな。その相関関係をオレ達の進む道程において、武器に利用できると考えてるんだ。今はその最初の照合作業ってとこなんだろう」

「でもなあ…、あの二人が接した人間は場所が遠く離れてるし、このあと先ってんならわかんねえが、今は繋がんねーよ。いくら何でも(苦笑)」

”武次郎の言は一般論ではその通りだが、ミチロウとノボルさんの場合は繋がるではなく、繋げるって思考だ。この捉え方の違いで結果はドラスティックに差が出てくる気がする…”

椎名は武次郎の言葉を受け、ふとそんな確信めいた思いが頭に浮かんだ。

...


しばらくすると、グループの最年少メンバーであるマキオが部屋に到着した。

「おお、マキオ、ご苦労さん…」

「武次郎さん、椎名さん、お疲れ様です…」

マキオはグループ内の主だった者からは、その一途さゆえ、”可愛がられて”いた。
彼はグループの幹部格である二人に挨拶してから、部屋の隅に腰を下ろして正座した。

「…いいか、マキオ。これからオレ達はギアアップするぞ。全員がな。今、ノボルさんは熊本から札幌に飛んで、グループのリーダーとしてブルドーザーのように道を切り開いてるんだ」

「はい!」

「…他方、九州では三貫野が仲間たちを総動員して、目的達成の下地を着々と築いてくれている。まだ他には話してないが、御手洗って名の豪傑が近くハマにやってくる。でだ…、大打グループの本拠であるここハマのオレ達は何をすべきかだ。それ、当面は二つだと解釈しとけ」

「二つですか…!」

マキオは身を乗り出し、表情は明らかに紅潮していた。
そんな愛すべき兵隊に、大打ノボル不在の横浜を支える武次郎&椎名の二人は何とも言えない笑顔で彼を見つめていた…。