二つのダークな白い吐息③


”焦がれた男?”との落ち合い場所は、北海道K市中心部のいちょう通り沿いに位置する噴水公園となった。
大きな柱時計を正面にした小さな木製の長椅子に腰かけ、大打ノボルは”彼”を待った。

”フフ…、まるで積年くどき続けた恋しい相手とついにみたいな気分だ”

ノボルは心の中で自分を皮肉り苦笑いを連発させていた。

待ちわびること15分…。
その相手は、ほぼ時間通りにノボルの前に現れた。


...


スカウト対象としての、秒殺オオカミといよいよの対面…。
ノボルは決して強がりなどではなく、当初よりそれは必ず叶うと見ていた。

”オオカミには会えるという確信…。オレ的には坂内さんとおんなじ感覚、つまりデジャブっぽい気がしていた。もう決まってる、その光景…。おそらくは、まもなくご対面のソイツはきっとそいつだ(笑)”

そして実際には…。



”…まあ、デジャブか否かはともかく、概ねこんな感じだったな(苦笑)”

ノボルのデジャブイメージとは”瓜二つ”にまではいかなかったが、長身でやせ型、やや猫背…。
オオカミのビジュアルはその予想に近かった。

「…アンタがオオカミさんってことでいいんだな?]


正面の男は無表情でこっくりと頷いた。


...


「まあ、座ってダベろうぜ」

「ああ」

男は80センチほど離れてノボルの右横に腰を下ろと、すぐにその長い足を組んだ。

”この不愛想加減もデジャブをなぞってるわ、フフ…”

何しろノボルはウキウキしていた。


...


「…まずは素直に言うぜ。よく会ってくれた。九州からだったからな。やはりうれしいわ」

「フン…、あんなラブコールされたんじゃあ、どんなヤロウか確かめたくなるってもんだ。もっとも、そっちはそれを読んでのアクションだったのだろうが…」

「まあ、そんなとこだ。だが、文字で記した内容に、ほとんど偽りはなしだぜ」

「つまり、今すぐの仕事ってことはでないと…。要は、かなり先でのアンタからのオーダーに、オレが乗れるっかて言質が欲しいってことだな?」

「ああ、そうだ。そこでまずはズバリ告げよう。…具体的な名称は明かせないが、オレたちのグループは、日本国内では指折りの、ある有力やくざ組織とパートナー関係を組む合意を交わしたんだ。それ、最初に断っておくが、単なるやくざの予備軍、2次組織的なものとは全く異なる。”ここんトコ”をまずは前提にして、話しを聞いてくれ」

「じゃあ、どんなご関係を結ぶと言うんだ。やの字とはよう…」

二人はその目線を正面に据えたまま、お互い顔を合わせず、共にぼそぼそ口調ではあったが、早くも核心に入っていた…。