二つのダークな白い吐息②


”ふふ‥、ヤツとアポ取るまでのだんだんは三貫野じゃあねえが、アバンチュールってメンタルもケッコーあったかな…(苦笑)”

”秒殺オオカミ”との”第一次”折衝を終え、ノボルははるばる九州から追い求めてきたそのヒットマンと接触に至るまでの経緯を思い返していた。

...


”その少年”が”交信ポイント”に出現したのは、札幌に入って5日目の朝だった。

”あの子が飛脚に間違いない…。ツケるか…、それとも、返信を持ってくるのを待つか…”

この時を迎えた際の選択…、ノボルは散々考えて尽くしたことであったが、結局はその場で決断することとしていた。

”どう見ても本物の小学生だ。格好からすると、そう遠くからって感じはしない。手提げ袋のみで、ここからだと、さほど大きな荷物は入ってなさそうだし。通常で考えれば近くに住む地元の子ってなるか…”

ノボルはエンジンを停めた車の運転席から、およそ7、8M先にいる”待望の小さな使者”を凝視しながら、次々と推測を巡らしていた。

...


”うん…、手慣れてる…。であれば、近々ここにまたってことは可能性が高いな。今、コトを急いで接触しない方が無難だろう…。だが、少しツケるか…”

ノボルは迷った末、ここでの接触はせず、車から降りて少年の後ろをしばらく追ってみることにした。
気づかれない範囲で…。

”現場”は歩道のない2車線で、見通しの良い平坦な直線の生活道に面していた。
車も人も適度に行き交い、主に民家と空き地が混在するが、バスは通っていない…、そんな一角だった。

”最寄りの駅はとても歩いて行けない。バスの走る幹線道路までだって2キロはある。あの子はここへ向かってきた道を折り返すだろうから、しばらく先まで行ってみよう…”

少年の作業はものの1分ちょっとで終了した。

”どうやら、三貫野の言っていたとおり、中では何かのチェックをしてるな。ヤツのサインが間違ってなければ、少なくとも、あの子がターゲットにメッセージを届ける。その前提でいいだろう…”

ノボルは、その小さな”遣い”と思われる少年の後を10分ほど追った。
そして‥。

...


”そういうことなのか…。ふーん、そうなれば…”

現場を後にした少年はなんと、表通りに出ると郵便ポストに手紙らしき定型サイズの封筒を投函したのだ。

”あの少年はあらかじめ切手を張った封筒を用意していて、こっちのサインアップが合致できたのを確認してから封筒に詰めポストへか…。で…、数日中には然るべき届け先にオレのメッセージが到着する…。ふふ‥、なら、しばらくは先方からの反応を待つとしとう。何しろ、初回からお熱いラブレターだ。無視はないだろう…”

ここに至ると、ノボルにはスカウト対象者からのリターンが届くことを半ば確信できていた。