ヒットマンを求めて、北海道へ②



「…あれは2年前、直接ご本人から聞いた話がキッカケでしてね。このストックノートには詳細残さず記してましたので、記憶は完全に戻りました。仮にそのご婦人をAさんとしますが、この方、かなり裕福だったんです。で…、当時は定年退職したご主人と海外旅行三昧でした。その年の春には中国のツアーに出かけて、そこで…」

「はー⁉いやあ…、中国で麻薬密輸の容疑って…。無実だったにしろ、当局に一旦拘留されて、よく無事に戻れたな…」

「それが…、実際に密輸を自供した日本人の男はツア一で緒だったそうで、まあ、その関連で疑われたらしいですね。で、その男がAさんご夫婦は無関係だと証言してくれたそうなんです。それで、その際、もう生きて日本に戻れないと覚悟したらしいその男から、ある遣いを頼まれたと…」

「…じゃあ、その人、中国で一緒だった密輸犯の男を裏切った仲間のヒット依頼するメッセンジャーを…」

「いえ…、”その結論”はオレが導いたもので、すなわち、Aさんご夫婦はなにも承知していなかった。日本に帰って、その男からの手紙を指定された場所に運んだだけなんです。しかし、結果的にそれは自分を裏切った人間へのリベンジを然るべく執行人に指示する文書を届けたことになった…」

「それで!そいつを受け取った野郎が、ヒットマンなのか‼」

「ええ、オレの見立てでは、まず間違いなくそのヒットマンこそ、通称”北海道の秒殺オオカミ”…」

「オオカミだとう~?」

大打ノボルは思わずのけ反った…。


...


「…それじゃあ三貫野、Aさんとかって人、三日後のニュースで報道された殺人事件の実行犯と、自分たちが中国から持ち帰った文書を受け取った人物が”一緒”だっていうお前の推論、全く知らねえってのか?」

「ええ、ご本人には何も…。今でもご自分のなさったことでどういった事態が生じたかはつゆほども…」

ノボルは、三貫野の何のためらいもなくドライなスタンスに徹底できる感性に、改めて驚かされると同時に感服しきっていた。

「要するに、お前はAさんから”全部”を聞き出し、密輸犯の男の心理面からの推測をなぞっていった。その末、殺人依頼の裏舞台を透視しちまったんだな?」

「そうです(笑顔)」

”コイツ…‼紳士の仮面を被ったなんとやらはそっちだろうが…。…しかし、その夫人のアバンチュール心をくすぐる誘導術は大したもんだ…”

すでに三貫野を見るノボルは呆れ顔に至っていた…。