大打ノボルの秘められた黒い意思/運命の舞台、九州へ
黒の飛翔⑧



”三貫野のヤツめ…。あのニヤケ面、止まらなかったな。ふふ‥、ヤロウの頭のなかじゃあ、あの時はもうオレと坂内さんのおしゃべりが映像化されてただろう…。フン…、そうさ、こっちのシュミレーション通りで進めればいい。うまくいく…”

この後の二人は、そのシュミレーションを互いに確認し合う作業に終結していた。

...


「…坂内さんはこっちの予想に沿った反応を示す。そこで、向こうが描くパートナーシップのスキームを聞き出す。横浜で東龍会の幹部と会った椎名らの報告から推測したオレの見立てでは、ほぼ我々の望むカタチで投げかけてきますよ」

「そしたら、即答だな?」

「はい、その場で合意を交わしてください。要は今の段階では大枠、ガイドラインで全然OKなので。何しろ中長期…、仮に相馬さんが”その時期”を早めた場合でも、その時の状況に即した連携に留めればいい。先方もそれに合わせてきますから。これから坂内さんは、ガキ市場の確立とそれに喰いこむスキームの模索をさらに進め、試行錯誤を重ねるでしょう。ただしそれは、あくまで相和会の縄張りがニアミス環境にある星流会を使ってです」

「モルモットは星流会だな?」

「ええ。そしてその際、ビジネスパートナーの想定は我々です。だから、両者はそれぞれで準備にかかるってことが求められる。今の時点では、提携関係の下合意を交わすことが何より肝要なんです」

これはノボルのブレーン・三貫野の”結論”だった…。


...


「わかった。じゃあ明後日は一人でいくぞ。先方も坂内さん一人って通告してきたんだから、ここはシグナルとして受取ろう。いいな?」

「ええ。頼んますよ、ノボルさん」

”最後はマジ顔してたな、三貫野のヤツ…。まあ、明後日の東龍会トップとの初遭遇は、オレ達のロードにとってそれだけ重大な意味をもたらすってことだしな…。絶対やってやるぜ!”

後年から照らせば、”NGなきワル”大打ノボルは、この夜、その誕生を遂げたと言えよう…。