大打ノボルの秘められた黒い意思/運命の舞台、九州へ
黒の飛翔③



「…最初の夜でも触れましたが、東龍会は関東内はもとより、関西からも対相和会の”専属担当”と見なされてるんです。星流会を傘下に抱えてるってのが大きな要因になるが、その他にもあるんです。東龍は同じく関東直系の田代組とはつながりが強く、その田代組も相和会とは過去にいざこざが絶えなかった変遷を抱えてるんです」

「なるほど‥。その田代と東龍か”お友達”ってんなら、なおのこと、相和会番ってなるわな、業界全体からも(苦笑)。じゃあ、それでとなるぞ、オレとしては…」

「まあ、そうっすね(笑)」

三貫野はここで一呼吸を置いた。

”コイツ…、そろそろ核心ってことだな。だいぶこの男の表情が読めるようになってきたぜ。さあ、早くオレをしっくり納得させてくれ、三貫野…”

...


「おそらくこの展開になってきたからには、I組が下りればそれで終わりです。しかし、今までの流れで、一度は向きあわないと本場アメリカのマフィアさんにも顔が立たない。だから、相和会とのドンパチは必至と皆、そう見てるんですが…。問題はその後となると…、コトが愛国心とも直結しちゃってるんで、I組は適度なとこで折れて相和会に謝罪とならざる得ない。仮にも業界大手の一角、関西の直系が独立団体にアタマを下げるんです。これは同じ全国組織の関東からしても、無関心ではいられない」

ノボルにとって、これはわかり易い面がある一方、東西の思惑や立ち位置が今ひとつ掴みどころが得られずといった歯がゆさが残った。

「…相和会を知り尽くしている田代組と東龍会は、おそらく早い段階からこの展開を見立てていたと思いますよ。コト終結の折りには、今後もますます脅威となるであろう相和会にどう向き合っていくかの、その課題がどんと目の前に出てくる」

「‥」

”相和会か…!大手連中をここまで動かすなんて…”

このあたりでノボルは、今時点での業界の中心軸は相和会なのかもしれないという仮説に行きつこうとしていた。