大打ノボルの秘められた黒い意思/運命の舞台、九州へ
黒の飛翔②



大打ノボルは明らかに戸惑っていた…。
そんな胸中を察した三貫野は、少穏やかな表情で続けた。

「ノボルさんのこう言った状況での深慮ぶりは感心するし、その懸念もわかります。その上で、オレ的には二点が頭に浮かんでます。まず、オレたちシロートのガキが請け負った”仕事”は完遂してる。対して、あちらさん側の業界でのムーブメントはまだこれからって段階だが、これは明確に分けていいことです。少なくても、我々の今の立場だったら…」

「よし、それはそれで納得だ。もう一点を聞かせてくれ」

ノボルはせっついた。
自分以上に深慮を備えているであろう、このブレーンが明らかに時期尚早をさほど重くは据えていないのだ。
彼は何しろ、その理由に納得したかった。

...

「ええ…。今般における対相和会事案に於ける合意形成の場を、熊本抗争の終結に盛り込んでとなれば、その場は坂内さんの東龍会が主導するでしょう。そうなった場合、ココ熊本でと提案する可能性は高いと思いますよ」

「理由は…?相和会の事案が北九州だからってことか、それとも‥」

「一応後者ですね。…直近の業界情報じゃあ、I組と相和会の衝突は時間の問題と見てるようです。それで、これはI組サイドである関西も含めてなんですが、業界内の世論はどうもI組には厳しい声がマジョリティーを占めてるらしい…」

「おい、おい…‼味方もって…。三貫野、もしや‥⁉」

ノボルと三貫野のこの掛け合いは、もう毎度のことになっていたが、ここに来て誠にリズミカルなスイング感をはじき出していた。


...


「ピンと来ましたか?今回の”北九州事案”はアメリカ側に非あり、相和会はスジが通ってると…。詳細までは定かではないが、こんな愚劣極まる行為をしでかしたアメリカ側に付いてと…、I組は売国奴扱いされてるようで‥。どうやら相和会側による、先の大戦での敵国ってことで、うまく愛国心を駆り立てる世論誘導が効を奏しているってのもあったんでしょうが」

「うーん、そう聞かされりゃあ、随分と明快な図式ではあるが、関東はそうなったら動きようがないだろう?オレ達が火をつけた熊本のケンカはよう、無駄だったてことになるんじゃないのか?」

「オレはむしろ逆だと思うんです」

「よし、その先を聞こう!」

ノボルは身を乗り出してそう言った。