大打ノボルの秘められた黒い意思/運命の舞台、九州へ
ブラック&スマート!痛快な絵図⑪



「…空港にもくまちゃんが3人付いてくれる。搭乗までお前をガードするよ。羽田に着いたら、渡してあるメモの通り行動しろ。ハマの仲間がお前を輸送先まで届けるから。その後のお前の身がらは、球磨黒の格上の”関東”が保証してくれてるよ。店をつきとめてきても、一新会の手を出せない相手がお前に指一本とて触れさせない。部屋の方は三貫野が解約して、残りの荷物は東京に別途届ける手はずさ。どうだ、カンペキだろう?」

「その通りになればね‥」

”この女、心配性だな…。そこはふまえておくか。これ以降の使い方を誤ってはいかんし”

ノボルはどんな時も、”この先”を見据えることに怠りはなかった…。


...


博多空港には予想より早く到着した。
ロビーでノボルはガードに付く球磨黒組の3人を確認した後も、亜里奈を一人にはしなかった。

「…そうか。わかった。亜里奈にはそのまま伝えよう。彼女の搭乗を見届けたらまた連絡する」

ガシャッ…

電話フロアで三貫野から進捗状況を確認し、公衆電話の受話器を置いた後、隣で腕を組んでその身をぺったり寄せている亜里奈が早速尋ねてきた。

「どうだったの?」

「お前の部屋へは元カレと他に2人だったそうだ。予想通り、お前の後見人役を演じる三貫野の相棒に詰め寄って、刃物出してきたとよ」

「!!!」

「…すかさず球磨黒が6人部屋に飛びこみ、刃物は使わず乱闘だ。まあ予定通りで、こっちの相棒が”警察呼んだぞ!”の一言で全員退却。これでこっちの仕事も完了。うまく行った」

「この後、一新会が仕返しとか、そういうのも、ホント心配ないの?」

「亜里奈…、何度も言ってるだろう。一新とくまちゃんのケンカは、東西上層部の暗黙事項の言わばやらせだ。下部組織の一新会が今回の件で勝手な振る舞いは自殺行為なんだよ、奴らの世界では」

「わかったわ…。後は私を無事に…」

ここでノボルは鋭い眼光を放って、静かにキレる!

「いいか、亜里奈!これからお前は、オレ達の協力者として動いてもらうんだ。無理は言わんが、信頼関係にひびを入れるような安易な疑心悪鬼は許さん。これはしっかり肝に命じておけよ!」

「はい…。これからは気をつけるわ、大打さん…」

この時に亜里奈が大打ノボルから感じ取った言いしれぬ怖れ…。
それを、彼女はこの男が命を落とすまで、自分の中へと宿すことになる…。