大打ノボルの秘められた黒い意思/運命の舞台、九州へ
ブラック&スマート!痛快な絵図⑩



そして決行の夜はきた…。
大打ノボルは熊本市内に近い、Y市郊外の幹線道路沿いに車を着けていた。

”ふう‥、間もなくだろう…。亜里奈がマンションから出てきたら、速攻だな。ここで一新会のチンピラに捕獲されたらそれで終いだ。オレのこれからはその一瞬でお釈迦に伏す。ここは、何としてもヘマはかませねえ‥”

運転席からマンションエントランス一点に視線を集中させ、自身遺瞬きも許さない…。
大打ノボルは、悲壮な決意に身を震わせていた。

...


”来たかー‼”

ノボルは運転席から左の助手席側ドアを勢いよく開いた。

「亜里奈、急げ‼」

勢いよくマンションエントランスから飛び出してきた亜里奈は、ヒールを脱いで両手で掴んでいた。
そして数秒後、彼女は頭から飛びこむように、助手席に収まった。

「早く行って‼奥さん、もう来るわよ!」

ブウンッー、ブブブーン…!

ノボルの愛車スカイラインは猛スピードで発進した…。


...


「このまま、博多空港までぶっ飛ばす」

「うん!ノボルさん…、怖かったわ、私…‼奥さん、包丁持って私に向かってきて…。だから私、あなたに言われた通り、バッグに手を突っ込んで、後ずさりせずに構えたてたわ…。内心、ブルブル震えながら。そしたら奥さん、すぐ電話んとこに走って行って‥。私、その隙に…」

「ああ、そんなところさ、相手の女からすれば。ダンナはやくざもんなんだから、相手も刃物持参なら、自分でヤルよりとにかく人を呼ぼうって頭に切り変わる」

「それで、ホントに大丈夫なの??…今頃、私のアパートに向かってるわよ、あの男、人連れて…。それに、空港で待ち伏せされて連れ戻されちゃったら、私殺されるわ!ねえ、私、無事に東京につけるんだよね‼」

亜里奈は興奮が収まらず、唇をぶるぶる震わせていたが、滑舌はよかった…。



「お前の部屋には三貫野のダチが詰めてる。プロレスラー並みの屈強な男で、度胸も据わってる。一新会の連中が何人駆けつけようが、くまちゃんは現地の外で10人待機してるから、その時の状況次第でドンパチかもな。だが、後処理は全部あちらさん側双方が仲良くやってくれるよ」

「私の方も大丈夫なんでしょうね!搭乗できるまで、あなたが責任もってくれるのよね⁉」

「オフコースだ」

車中…、亜里奈はすがるように、ただ、ノボルに念押しを繰り返していたが、ノボルは至って落ち着いた口調で答えていた。