NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。

その13



”オレは一体、どうっしちまったんだ…。今夜は麻衣がオレから離れねえ…。いよいよ、麻衣との決着ってことなのか…”

もうこの世にいない、本郷麻衣との決着…。

大打ノボルが自らの心に課した”それは”、明らかに尋常ないくらい熱く駆り立てられた麻衣という、稀有な好敵手を死に追いやった自己総括に他ならなかった。

生前の麻衣の気性とその生き様の本質を見切り、その弱点を突いて殺害した大打ノボル…。
表面的な結論からすれば、麻衣を葬ったノボルが勝者と言えた。

もちろん、息をひきとる直前の麻衣が、渾身の力を振り絞って実行犯の片耳を削ぎ、現場の崖下に投げ捨てたことで、完璧なミッション達成には至らなかった。

だが…、大打ノボルにとって、麻衣との決着は命の奪い合いのみで終結することなどで許容はできなかったのだ。

...


”麻衣…、お前は、死んだ後でもオレに挑む気だったんだろう…?あの世から、お前の弱点を容赦なく利用し、複数がかりでお前の命を奪ったオレに、死に際のお前の残した意地が、果たして何をもたらすか…。そいつを、あの世でニヤけて眺めているんだろうな…”

「ゴホゴホ…。ああ、用を足したくなった。どっちか着いてきてくれ」

「ああ、じゃあ自分が…」

背の高い方の男がそう言って席を立った。
そして、すでに足元がおぼつかないノボルの腰を支えるようにトイレへと向かった。

残された店の女3人は、一様にほっとしたような表情を浮かべ、肩で大きく息をついていた…。

...


その店のトイレは一旦店を出て、雑居ビル内の狭い通路を50M程歩いた、ぼんやりと暗いつきあたり奥にあった。

「自分はここで待ってますんで。ごゆっくり…」

「うむ…、ゴホッ…」

やや広めの男子トイレ内は、小便器3、大便器1だったが、その時はノボルの他、誰もそこにはいなかった。

ノボルは咳ばらいをしながら、真ん中の小便器に立ち、ズボンのチャックをゆっくりと下した。

”麻衣…、しっかり見届けろよな。お前のもたらしたオレへの一撃がどう言う結果をもたらすか…。お前は自分自身でも自覚していた弱点から逃げず、オレの企みにも真正面から受けて立った。お前のその姿を知って、オレもお前との決着から逃げないと決したんだ。来るなら来いや…、麻衣よう!”

...


この時点でノボルは用を足し、チャックに再び手を持っていった。
と…、次の瞬間だった。

ノボルはまず、”ブシュッ…”という、何とも陰鬱な音を両の耳で確認した。
次に、背中がまるではぎ取られるかのような、異物の侵入感が全身を巡った。

ここで、彼の時間が一時停止する…。