NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。

その8


武次郎の”了解”は即タカハシから椎名に告げられ、その日のうちに坂内の元に”上がった”。
事実上、これでレールは新たに敷きなおされたのだった…。

...


翌日、武次郎が兄ノボルとH市の事務所で”会談”したのは、夕方すぎだった。

「…そうか、いいじゃねえか。犬飼さんのような関西の大物と繋がっておけば、今後も何かと力強い」

「じゃあ兄貴、いいんだな…」

「ああ。武次郎…、だが、ヤクザとは一点だけに目を奪われていては共に歩めない。お前にはこれ、肝に銘じておいてもらいたい」

「わかってる。…兄貴、自分のことを言ってるのか?」

武次郎は目を細め、彼にしては珍しく小声だった。
そしてその弟を見るノボルの目線も、NGなきワルの”それ”ではなかった。

...


「…麻衣とは早く出会いすぎたかもな。ヤツの生の顔を拝めたのは、たったの一度だったし…。だが、後悔はしてねえんだ。それに、ヤツがいないこの後も、オレの気持ちが変わることはねえよ」

「それって…、タカハシも言ってたが…。死んじまった…、いや、オレ達が殺しちまった、あの世の本郷麻衣と戦い続けるってことなのか…?そういうことか、兄貴!」

「オレ的には戦うというよりも、麻衣とは決着をつける…。そっちの感覚だな」

「オレなんかには、理解に苦しむのみだ。だが…、アンタと麻衣の、たった一度の”現場”を一部始終見届けたオレだ。何となくの掴みはあるよ、兄貴…。あの時の二人の間にはよう、誰も入りこめない空気があったな。鈍感なオレでも、ヤツとアンタが何かを交わし合ってたって感触は受けた。でも、もう何も言わねえ。兄貴の気の済むように自分を持っていけばいい…」

”武次郎…、お前達の判断に誤りはない。そうとなれば、オレの方は麻衣とも近々だろう…。その顛末で、お前は自分らの進む道に迷いを生じないでほしい。頼むぞ…”

この時のノボルは、はたして”どこ”を見据えていたのだろうか…。
その答えが”晒される”のは、この日からわずか2か月後となる…。