その7
「タカハシ!てめー、兄貴を売る気かよ!」
「誰にですかね?」
「東龍会にだよ!」
「それの腹だったら、とっくですよ。ノボルさんを大事に思ってるから、アンタへのソフトランディングなんだ」
武次郎とタカハシによるその場は、まさに感情をあらわにした激論となった。
「椎名もなんだな?」
「ええ。…武次郎さん、このオレと椎名はノボルさんの麻衣へのこだわりには強い危惧を抱いていた。”それ”は、アンタも承知でしたよね?”それ”に対しては、これまでずっと進言してきましたよ。言うまでもなく、ノボルさんの身を思ってのこと以外何もなかった…。麻衣を始末した後は、もう彼女を断ち切ってもらいたかった…」
このタカハシの言には武次郎も小さくだが頷いていた。
...
「ふう…、こんな話、したくはないが…。弟のアンタがこれまで、どれだけノボルさんの体のことを気づかってやったんです?…オレは、夜…、ノボルさんがぜんそくで苦しそうにしてて眠ることすらままならないその横で、大いびきをかいてるアンタを何度も見てきた。…あの人はストイックになれて初めて生きていける人間なんだよ!」
「だから今、兄貴を見捨てるってのか、それを聞いてるんだ!」
「見捨てるもんか!…あの人も麻衣と一緒さ。自分が抱えている”弱点”と共に生き切る性から逃げることができないんだって!…彼は麻衣と今も戦ってる。”そこ”から彼を救うためには、今の地位を緩やかに去って行かせるのが一番だと思ってるんですよ!」
”このタカハシが、ここまで感情を昂らせるとは…”
武次郎はそんな彼の姿を見るのは初めてだった…。
...
「…その後はアンタがこのチーム大打を背負って、幼いころから世話になった兄に代わり、我々モブスターズで目指したロードを疾走していけばいいんじゃあないですか?…当然、オレ達は全力で武次郎さんを支える。ノボルさんだって喜ぶだろうよ」
「うーっ…。タカハシよう…、死んでる人間と戦ってるって訳わからんだろうが…。兄貴はイカレてるといっても、パーにはなってねーんだよ‼」
「ああ、当たり前ですって!だが、”あれ”じゃあ、オレたちは着いていけても、我々のパートナーである東龍会は見切る。もう日本社会の景気はこれから青天井だろう。この先、互いの”ビジネス・ロード”を見据えれば、もう、本郷麻衣に熱くなる前のドライな彼に戻れなきゃ、東龍会はパートナーのリーダーと見なせない。そのシグナルはアンタだって感じてるはずだ」
「うぐぐ…」
まさしく武次郎は両手に拳を作り、歯ぎしりしている…。
...
「”このまま”がいたずらに延びれば、彼らに呑み込まれるリスクは高まる一方さ。…はっきり言って、大打ノボルは乾き続けることができてこそ、最強のNGなきワルでいられるんだ。この見解は、椎名もオレと全く同じ思いだし、わかって欲しいんだ、武次郎さん…。今のうちじゃあないと、手遅れになる!」
「フン…、要は同等のパートナーシップなんか、出来っこなかったんだ。所詮、日本を代表するやくざの大物連中と対等のパートナーシップなんぞ、絵に描いた餅だったんだろ?はは…。…おう、違うかよ、三貫野さんよう…」
投げやりな笑いを漏らす武次郎の胸中は、むなしい限りだったに違いない…。
だが、そこでも”一撃”を忘れてはいなかった。
...
そんな武次郎の究極の深意を瞬時に悟ったタカハシは、彼に結論を投げかける答えを以って、”勝負”に出た。
「武次郎さん、それを極限まで我々でも変えて行こう。まあ、長い目でってことになるが…」
この後、長い沈黙の後、大打武次郎はか細い声で呻くようにタカハシこと、三貫野ミチロウへ答えた。
「…椎名とタカハシの考えは、基本で理解するしかない。兄貴のためを思ってる気持ちも汲めたしな…」
タカハシは彼のこの一言で大きく息を突き、旨を撫でおろす思いだった。
そして頭の中でこう呟くのだった。
”これで包括の言質がとれたことになる。舵は切られた…”
...
果たしてこの時…。
大打ノボルの実弟・武次郎は、タカハシのその意を”正確に”受け止めての決断だったのだろうか…。
「タカハシ!てめー、兄貴を売る気かよ!」
「誰にですかね?」
「東龍会にだよ!」
「それの腹だったら、とっくですよ。ノボルさんを大事に思ってるから、アンタへのソフトランディングなんだ」
武次郎とタカハシによるその場は、まさに感情をあらわにした激論となった。
「椎名もなんだな?」
「ええ。…武次郎さん、このオレと椎名はノボルさんの麻衣へのこだわりには強い危惧を抱いていた。”それ”は、アンタも承知でしたよね?”それ”に対しては、これまでずっと進言してきましたよ。言うまでもなく、ノボルさんの身を思ってのこと以外何もなかった…。麻衣を始末した後は、もう彼女を断ち切ってもらいたかった…」
このタカハシの言には武次郎も小さくだが頷いていた。
...
「ふう…、こんな話、したくはないが…。弟のアンタがこれまで、どれだけノボルさんの体のことを気づかってやったんです?…オレは、夜…、ノボルさんがぜんそくで苦しそうにしてて眠ることすらままならないその横で、大いびきをかいてるアンタを何度も見てきた。…あの人はストイックになれて初めて生きていける人間なんだよ!」
「だから今、兄貴を見捨てるってのか、それを聞いてるんだ!」
「見捨てるもんか!…あの人も麻衣と一緒さ。自分が抱えている”弱点”と共に生き切る性から逃げることができないんだって!…彼は麻衣と今も戦ってる。”そこ”から彼を救うためには、今の地位を緩やかに去って行かせるのが一番だと思ってるんですよ!」
”このタカハシが、ここまで感情を昂らせるとは…”
武次郎はそんな彼の姿を見るのは初めてだった…。
...
「…その後はアンタがこのチーム大打を背負って、幼いころから世話になった兄に代わり、我々モブスターズで目指したロードを疾走していけばいいんじゃあないですか?…当然、オレ達は全力で武次郎さんを支える。ノボルさんだって喜ぶだろうよ」
「うーっ…。タカハシよう…、死んでる人間と戦ってるって訳わからんだろうが…。兄貴はイカレてるといっても、パーにはなってねーんだよ‼」
「ああ、当たり前ですって!だが、”あれ”じゃあ、オレたちは着いていけても、我々のパートナーである東龍会は見切る。もう日本社会の景気はこれから青天井だろう。この先、互いの”ビジネス・ロード”を見据えれば、もう、本郷麻衣に熱くなる前のドライな彼に戻れなきゃ、東龍会はパートナーのリーダーと見なせない。そのシグナルはアンタだって感じてるはずだ」
「うぐぐ…」
まさしく武次郎は両手に拳を作り、歯ぎしりしている…。
...
「”このまま”がいたずらに延びれば、彼らに呑み込まれるリスクは高まる一方さ。…はっきり言って、大打ノボルは乾き続けることができてこそ、最強のNGなきワルでいられるんだ。この見解は、椎名もオレと全く同じ思いだし、わかって欲しいんだ、武次郎さん…。今のうちじゃあないと、手遅れになる!」
「フン…、要は同等のパートナーシップなんか、出来っこなかったんだ。所詮、日本を代表するやくざの大物連中と対等のパートナーシップなんぞ、絵に描いた餅だったんだろ?はは…。…おう、違うかよ、三貫野さんよう…」
投げやりな笑いを漏らす武次郎の胸中は、むなしい限りだったに違いない…。
だが、そこでも”一撃”を忘れてはいなかった。
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そんな武次郎の究極の深意を瞬時に悟ったタカハシは、彼に結論を投げかける答えを以って、”勝負”に出た。
「武次郎さん、それを極限まで我々でも変えて行こう。まあ、長い目でってことになるが…」
この後、長い沈黙の後、大打武次郎はか細い声で呻くようにタカハシこと、三貫野ミチロウへ答えた。
「…椎名とタカハシの考えは、基本で理解するしかない。兄貴のためを思ってる気持ちも汲めたしな…」
タカハシは彼のこの一言で大きく息を突き、旨を撫でおろす思いだった。
そして頭の中でこう呟くのだった。
”これで包括の言質がとれたことになる。舵は切られた…”
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果たしてこの時…。
大打ノボルの実弟・武次郎は、タカハシのその意を”正確に”受け止めての決断だったのだろうか…。



