その2



「…あのクソ娘を葬ったのはいいが、しっかり置き土産ってか…!厄介なことになったな、兄弟…」

「なあ、田代…。冷静に考えてよう、今回、大打らを責められるか?方耳ひとつが命取りなのはわかる。おそらく、”アレ”の主が実行犯だったと、相和会は麻衣から伝え受けたはずだ。ならよう…、奴らは麻衣の仇を打つだろう…。要は、その対象がどこまでかだ。”片耳を置いてった男”を突きとめて拷問すれば、最低でも大打までは割れる。問題はその先まで見定めているか否かだ」

「はっきり聞こう。”その先”とは、アンタ若しくは東龍会だな?」

「ああ…」

「なら、今から手を打たねえと…」

「手は打ってるだろ。だが、そんなもの読んでるって。先方はな…」

「兄弟…、この関連に限ってだけなら、相和会のトップ・矢島を半ば懐柔しているんだろう?獄中の御仁経由で。それを読んで誰がいつ、どこまでってんだ?」

「言うまでもないさ。剣崎だ。ヤツは近い将来、相和会を背負って立つ。埼玉県警からの寵愛はしっかり引き継いでな。その時さ、奴が麻衣のリベンジに出るのは。それがわかってるからには、チキンレースを受けてやるしかねえだろ!」

「じゃあ、”もう一人”もやるってのか、”予定通り”?」

「いや、二人さ」

「あんた…、そこまでやる気なんだな!」

...


「フン…。所詮、麻衣と残り二人はセットさ。相馬の残した”白い遺産”はこっちがしっかり活用さ。いや、ちゃっかりだな」

「おい…、冗談言ってる場面じゃねえだろう、アンタ!塀の中の建田と現トップに飴だけで勝負に出るのかよ⁉」

「フフフ…、そのためにも”チーム大打”には、今回の耳一つ、とりあえず不問にしねえとな」

「ふう…、そういうことか。なるほどな…(薄笑)」

...


「まあ、片耳野郎は、こっちでしっかり管理ってことにはなるが…。いいか、田代…。剣崎にはだ、麻衣を殺った張本人を与えず、次の二人を殺る実行犯もムショに入ってもらうから、タッチさせない。故にその間は、相和会の動きを封じられるんだ。大打のグループにも安心感を与えられる。…そこを踏まえてだ、俺とアンタで剣崎が組を継ぐまでに、”最良の方向”に持って行こうや」

「その組み立て、いいな…。ふふ‥、相も変わらず豪胆無比な悪党だぜ、アンタは」

「だが、ギリギリの戦いになるぜ、兄弟よう。相馬が死んでも相和会は我々大手にとって、極めて危険な爆弾だった。しかも、奴らは時代を捉える嗅覚を持ってる。剣崎が息してる限りな。どうだ、こんなヤバイ賭けだが、一緒してくれるか?」

「…ああ、学生時代からの腐れ縁だ。難攻不落の憎っくき相和会を潰す宿願は、関東の他の連中に譲れねえさ。俺達二人でやってやろう」