その1



通称、高台広場…。
何のことはない、埼玉県U市北西部に位置する高台の空き地で、特段公園の体を成していない。

地元の若者からは、週末のデートやツーリングの穴場として捉えられてはいるが、あまりにも風当たりが強く、ウィークデーの日中などは、人影を目にすることが稀な場所だった。

「うん…、ここでいい。これからは風の冷たい季節になるし、人目は極力避けられるだろう。適度にアップダウンとか木々や岩場、それに土穴があるのも、”仕事”の際は好都合だろう‥」

「じゃあ、”決行現場”はここってことでいいですね、オオカミさん?」

「ああ、いいよ。ただし、時間帯は平日の昼前から陽が明るい時間帯までだ。台風・暴風雨並みでなければ雨天でもかまない」

これで、麻衣ヒットの実行場所は決した。

...


「わかりました…。さっそく手配しますよ。それで、事前にお伝えしてますが、今回は2段構成になります。あなたの登場前に、マトには複数を当てる。多分二人です。そこでの展開次第だが、確実にマトを絶命させるタイミングでオオカミさんに出番を乞う。このパターンになりますから、承知願いますよ」

「…ああ、武次郎からも聞いている。しかし…、今般のマトは未成年者、しかも女の子だろう…。オレに殺らせる前段から複数がかりって…。なんかな…」

「ここではっきりと言っときましょう、オオカミさん。我々があんたに望むのは、マトを200%、確実にココで絶命させること。それのみなんだ!」

ここでタカハシの口調は、別人のように激しくなった。
これこそ、冷酷無比の殺人コーディネーター本領発揮と言えた。