NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。

その7


「…遠縁娘を担いで、諸星さんが押し出したガキの代表・砂垣順二を追っ払わせ、都県境のフレーム再編の主導権をもぎ取ったってのは、確かに相和会×星流会のガキによる代理戦争に据え置けば、攻めてきた相手を返り討ちという形で圧勝した相和会のメリットととらえられるんでしょうけど…。実際に相和会が差し出した交換条件と比べると、明らかに諸星さん側の方が実利は大きい気がします」

「うむ、まあそうだな」

「そのことはですよ、相馬さんも十分承知でしょうし、そうなると、なぜあっさりそこまで大判振る舞いをしたんだろうって…。そんな疑問がどうしてもフ拭えないんですよ」

「ふふ…、ノボル、なかなかいい指摘だが、相馬には組のメリットとかなんて頭にねえよ。ハナから。はっきり言って、相和会がつぶれたって構わねえとさえ思ってるさ、あのイカレはよう」

”やくざのトップが自分の組つぶれて平気ってのは、もう正気じゃねえわ、ホント…”

自らイカレた男を自認してるノボルも、相馬豹一の”素”を垣間見るたび、そのイカレ度合いの違いにはある意味、感嘆の念を覚えていた。

...


「そもそも、俺や諸星みたいなヤクザとは別の生きもんだって、相馬豹一って男はよう(笑)。あそこまでイカレたトップだ。組のモンや兄弟分の明石田が支えてこなかったら、とっくに相馬も組も消えてただろうな」

「…」

「…所詮ヤツは、思いついたことを”気の向くまま”やらかしてくって感性なんだ。今度のこともよう、さしずめ諸星の送りこんできたガキに、女子高生のギャルをぶつけてやりゃあ、こりゃ面白しれえやって、そんなとこだろうや(苦笑)」
 
「でも…、自分の血縁に仕立てたであろうその娘は、業界への自分の後継にまで指名を明言してた息子を、結果的に死に追いやった子ですよ。普通じゃあ考えられませんって!」

ノボルは相馬のそんな感性の正体を知りたかったのかもしれない。
加えて、そんな相馬に”見染められた”その娘のことにも、異様に興味を惹かれる自分を自覚していた。

...


「そうさ、だから奴は気狂いなんだって。あのイカレた男の考えることなど理解不能ってことだ。…だがな、ノボル。そんなイカレ野郎だが、相馬は何しろ人の想像できないとんでもないことを考えやがる。今まで我々はさんざん、それを骨身に刻んできた」

ノボルは受話器に届いてくる、相馬豹一の業界における生き証人といっていい東龍会会長坂内の私見を、一言も聞き逃すまいと耳をそばだてている…。

「おそらく、今回のギャル起用もよう、相馬なりに”ほかにも何か”を考えてる、いや”企んでる”って気がするぜ。第一、ガキにぶつける女子高校生だって、それ、誰でもって訳ではなかったはずだ。あくまで相馬の目で、”これは”と感じたからこそ、自分の血縁に仕立てた。まあ、それが、実子のアレを切り裂いた、そんなイカレ具合を買ってってこともあるんだろうが…」

”いやぁ…、聞けば聞くほど、相馬って男のイカレ度は尋常じゃねえな。歳の離れたジジイだが、胸がときめくぜ(苦笑)”

この時の大打ノボルは、ある種の陶酔感に浸っていた…。