大打ノボルの秘められた黒い意思/ 運命の舞台、九州へ
野心という黒い聖火①



「…ノボルさん、アンタはやはり時勢を味方につける才気を持ち得ているようだ。今、この時期の熊本で”アクション”となれば、様々な意味合いで波紋と影響は小さくない…。これは好む好まざるを超えてです…」

「椎名も似たようなことを言っていたな…。ヤツは、九州でアンタに会ったら直に聞いみろってことだった。では、聞かせてもらおう」

三貫野は思わず八重歯を覗かせて苦笑いしていた。

”椎名から聞いていた通りだ。この男…、泥臭さとえげつなさをここまでナチュラルに内面へ性根付かせているのに、なんともスマートなモードを発してくる。狂気を宿しながらも、年中無休で生真面目な平常心とかか…。さすが、極道もんも掌に乗せちまおうって心得の持ち主だ…”

これは彼の、大打ノボルと一見しての第一印象ではあったのだが、実際には内面透視による”見切り”に至っていたのではないか…。


***


「まずもって、この九州の地なんですがね…。全国組織としての…、ああ、要は今日の日本を動かすヤクザ業界ってことでうがね…。その大手2社である、関東と関西双方にとっては、旧来から代理戦争の舞台なんです。特に北九州やこの熊本周辺は、ずっと極道界の火薬庫だった歴史があり、それは現在に至っている…」

「…」

この三貫野の切りだしで、ノボルの眼光は極度の鋭さを放った。
そして、それを当の三貫野は見逃さなかった。


***


「…具体的には球磨黒組と南州一新会がそれぞれ、東西広域大手の直系傘下として”定期的”に抗争を”勃発させて”いると…。で、その都度抗争の終結に際しては、東西から実に”多彩”な大物連中が仲裁役として出張り、手打ちになる…。その実情はヤラセに近いと言っていい。東西は”その場”を利用…、いや、活用して、その時期に互いが抱えている懸案事項をひっくるめて合意形成させる機会にしてしまうと…。これが、東西間ここ数十年の慣例なんです」

「なるほどな…。お互い出来レースを承知してるから、直系枝同士のいざこざのタネを絶やさない土壌ことが東西両大手共、広義でのメリットにはつながるってな…」

「そうです。ノボルさん…、どうやら、ちょうど今もその”シーズン”を迎えている気配なんですよ。近々、球磨黒と一新会のケンカが起こります。おそらく関東と関西の”本社決済”は内諾が下りてる…」

「要するに、この九州で”勃発させる”必要性が東西間で生じてるということなんだな、今現在?」

三貫野はニヤリと口元を崩すと、ゆっくり首を縦に振った。





”この男、すでに察したようだ。よし、夜も遅いがここで全部告げておこう…”

後に、大打兄弟の目指すロードにおいては、常にそのコアな”殺人コーディーネーター”という役回りを演じ続けることになる、通称”タカハシ”…。
その”前身”である三貫野ミチロウは、これより長きに渡る大打ノボルとの共同作業を、事実上ここでスタートさせる…。