その3


「うむ…。今回の件を受けて、諸星は砂垣をココに戻すと言ってる。ガキのフレームでカムバックだ。聞いたところ、その伏線は打ってあるようだし、何とかパージバックを強行できるだろう。俺としてはよしとした」

”砂垣は都県境の中心へ戻るのか…!とすれば…”

「…そこでだ、そうなれば、砂垣のいない間に墨東会は女どもと手を繋いでるっていうんで、そこをまずはねじ込むそうだ。つまり、砂垣がまたオンナどもとケンカだよ」

「じゃあ、去年に逆戻りですか?」

「単純にそうは括れないだろう。まあ、今のところは相和会としての出方待ちだ。諸星がガキ使ってちょろちょろやってりゃあ、何らかのタイミングでガブッと来るやもしれん。だが、結局のところは、相馬がどんなアクションに出るかは予想もつかん…。あの気狂いのやることだけはな…」

ここで坂内は大きくため息をついて、タバコを咥えた。


...


坂内は、ノボルからのライターで火をつけたタバコをこれでもかというくらいに吸い込み、そして大きく吐き出したあと、話を続けた。

「…結局のところ、相和会次第だ。それによって、どんな局面だって考えられる。そこでいろいろ考えたが、お前は一旦横浜へ引き揚げたほうがいい」

「えっ…、でも、それじゃあ、前回の黒原ん時と一緒ですし…」

「他のもんはいい。ノボルだけは当面ここから消えるんだ」

「あのう…、差支えなかったら、理由を聞かせてもらえますか?」

ノボルの正直な気持ち…。
それは、できればここの地に留まり、この後の展開を生で目にしたい…。
そんな強い思いに駆られていたのだ。
何故か…。

「…お前はオレの大事なパートナーだからだ。チーム大打のトップは、今ここで相和会とは最悪ニアミスで留めんとまずいって気がするんでな。まあ、その理由と又聞かれるだろうから先に言うが、俺の読みが当たれば、ここ1年か2年の間にここへ戻ってきてもらう予感がしてな。今はお前を温存しておきたいんだ。まだ、今のステージでノボルの出番は早い」

「坂内さん…‼」

この時、ノボルの耳にした”1年か2年”という坂内の言葉は、彼の脳裏に焼き付く。
そして、この時から1年数か月後、彼は”NGなきワル”として、猛る女達の前に堂々の推参を遂げる…。