NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。

その7


折本の話すトーンは、明らかに変わった。
ネクタイをやや緩め、胡坐をかいていた片方の足をたてて、意識的に姿勢を崩した。

「…無論、カラダの関係のみさ。あの女だって当然、そういうつもりってことだった。だがよう、どうも情を産んじまったらしい。この前なんかは、女房と別れて欲しいって泣きだしやがった。当然、俺はそんなことできねえと、その場でキッパリと突きつけたが…。なんかなあ、今後のこともあるし、ここで尾を引くことは避けたいんだ…」

折本はその間、ノボルをじっと観察するように、横目を何度かちらつかせていた。
”それ”を意識して、ノボルは自分の表情にも気を配っていた。

...


「でな…、ノボルからも亜里奈にはうまく取り成してくれねえか。何と言っても、アイツ、九州からトンズラできたことでお前には恩を感じてるしな。どうだ?」

「わかりました。亜里奈にはオレからよく言い聞かせます。この件は任せて下さい」

「そうか!助かるわ、はは…」

「亜里奈が熊本でくっついていたのは、関西直系の枝でも名のないチンピラだったんで…。それがこっちでは、関東直系の大幹部である折本さんに直接ってことで、えらく感激してましたからねえ…。そういったお相手となれば、やはり女心としては割り切っていたつもりでも、一過性でそうはなるんでしょう。ヤツには分不相応をしっかりわからせますので、ご心配なく…」

「ああ、すまんがよろしくな。…だがよう、キツく当たってアレをあんまり悲しませんように、ほどほどで頼むわ」

「ええ、心得ています。”済んだら”首尾は伝えますので」

折本はあからさまに安堵の表情を浮かべ、”上機嫌”でノボルとのミーティングを終えた。

...


”ふふ‥、収穫だったわ。ここで東龍会ナンバー2に、”この手”の覚えを持ってもらうのは何かと有用だ。亜里奈もこっちの指示には忠実だったし、演技もまんざらじゃあないようだ。以後使える…”

折本と別れた後、帰路の車中でハンドルを握る大打ノボルは、例の薄笑いをまんべんなく浮かべていた。
本来の自分を醸すその顔は、その時、ちょうど半分ほどバックミラーに映し出されていた…。