その2



「折本さん…、では、オレ達は都県境へ戻るってことでいいっすね?」

「ああ、会長はなるべく早めがいいとな。…お前が向こうへ着いたら諸星には、時期を選んで砂垣とは面通しさせる手筈で指示してある。いいか、砂垣とは差障りなく適度に接し、諸星とのパートナーシップをよく観察しとくんだ」

そう告げる折本は、一際鋭い目線をノボルに発していた。

「…ノボル、相馬の諸星に対してのメッセージはよう、常にそのバックである我々東龍会や田代組を意識してのものだ。今までの”あそこ”での対立の構図は、一見、諸星が挑発しそれを相馬が跳ね返すというパターンだが、実際は相馬が諸星を経由して、逆に星流会の保護者たる東龍会を挑発しているんだ。それどころか、ヤツのその対象は関東全体にも及んでる」

「一匹狼がライオンの群れを挑発ですか…。オレの感覚では、ちょっと信じがたいと言うのが正直なところです、折本さん…」

これは紛れもなく、大打ノボルの本心だった。

”どこまでも驚かされる男だ、相馬豹一って極道は…”

この時のノボルはある意味、胸をときめかせていた。


...


「いいか、ノボルよう…。仮に相馬が引っ張り出しに乗った場合、ヤツは東龍会がガキを使って侵攻してくると睨んでのアクションになるよ。ふふ…、そうなったとすれば…」

「折本さん!その時はオレ達があなた方の”パートナー”として、行動ってことですね?」

「ああ、そう言うことになるだろうな。今のところは…。無論、それは大打軍団が直接相和会と向き合うってことじゃあないわな。そこんとこを織り込んで、こっちはこれからも諸星を定期的に相和会に向ける。そしてその先兵はヤツのパートナーのガキども…、砂垣らだよ。その攻防を、間近で自分の目と感覚を以ってしっかりと捕らえるんだ、ノボル。ポイントは、今までは愚連隊だったが、今度は限りなくやくざ色の薄いガキってとこになる。フン、坂内の会長も言っていたが、諸星はそこのところをよく計算して今後立ち回るだろうよ」

”愚連隊とホンマもんのガキとの違いを、諸星ビジョンは武器にしようってことか…!それをモデルスキームとして、坂内さんはオレ達とのパートナーシップを描いていると…”

気が付くとノボルはトリハダをたてていた…。