その7
南部



そのふたつとは…

紅組と愚連隊系の各グループだ

この墨東会によるアジテーションに、最早両者はリアクションを起こす…

そこで、墨東会としてそれへの”対処方針”を打ち出す

だが、その先はオレたち3人で誘導できるものではない

その時の墨東会全体が決めて行くことになる

ただし、オレ達の持っていきたい方針はしっかり据えておいて、出来ればそこに向かうようにできる努力はする

さて、その対処方針だが…

...


まず、愚連隊連中に対しては、オレ達3人の考えは完全に一致していた

ヤツらとは所詮、相入れない立場を明確にし、もし対立・衝突の局面となれば、断固排除の姿勢を打ち出す

つまり、最初から仮想敵対集団に位置付ける訳だ

これは黒原理念の根底にあるものに付随することだし、墨東会、それ以外の各グループも基本的に同意を得られると思う

だが、限りなくヤクザ色の強いその本質を、これからは連中なりにカムフラージュしてくる公算が強い

その流れ次第では乱立するグループの一部、あるいは墨東内部でも、愚連隊系勢力への接近を拒否しない風潮が出てくるかもしれない

そこは、注意深くそっちに向かわないような流れを維持していかねば…

...


一方、紅組への対応については、3人とも意見が分かれたわ(笑)

オレはもはや男も女もないという視点で、紅組とは共存・協力関係を築くことがベターだと思っているし、その方向を主張していく

高本は真っ向から反対で、おそらく現時点では、この考え方が墨東会内部のマジョリティーを得るだろう

積田は元々、墨東会に女性チームを再び取り込み、そこのセクションと紅組の緩やかな連携と併存関係が理想的な形だと主張していて、オレのイメージはあまりに時期早尚という見解だった

結果、少なくとも紅組とは対立関係に至らないラインだけはキープしようというところまでは、3人とも異論なしで合意したんだ



***



こののち、伝説となるヒールズ血のリンチ事件が起こったその日…。
南部聖一、積田真二郎、高本健一の”墨東トロイカ体制”を確立する三人は、黒原盛弘亡き後の赤き猛女達と連動した黒の根革命へとその一歩を踏み出す。

かくて、後の”一一砲”の結成、そしてその延長での新世代の紅組・南玉連合トップと鉄の連携、さらに墨東会トップに就いた積田真二郎と岩本真樹子による大同連帯の下地は静かに激しく根付き、来たるべき強大な敵と禁断の対峙を迎えることとなる…。