塩キャラメルは甘くない。





私が抱えた不安は、入学式の七海夫婦の登場でさえ拭いきれなかった。


「———さあ若者たちよ!大いに青春してくれ!」


「「「「「「おー!」」」」」」


その大きな声に、私ははっと前を向いた。どうやら、入学式は私がぼうっとしたまま終わってしまったみたいだった。


「返事はウェイだ」


「「「「「「ウェーイ!」」」」」」


「う、ウェーイ…」


私は小さい声でそれに倣った。


「明日からイベントあるのかなー」


「えー私まだパートナーの人と会ってないんだけど!」


いつのまにか友達になっている女子生徒がちらほら。


みんななんでそんなにすぐに友達になれるの…⁉︎


私が焦っていると、ふと横に一人で帰ろうとしている女の子を見つけた。


よし。チャンス…!


「よければ友達になりません、か……」


と声をかけてからぎょっとした。


「あ……さっきの」


と彼女が呟く。さっき部屋を間違えてしまった、あの女の子だった。