「……芽琉は、どうしてこの学校に来たの」
初めての名前呼びだった。初めて私に関心を示してくれた。
そのことだけでも嬉しかった。
そして、考えなくとも既に私の答えは決まっていた。
「イチバンになりたかったから」
私は詳しく言わなかったけど、鷹良くんは深堀りすることはなかった。
「鷹良くんは、なんで…」
鷹良くんの答えは、私の予想とは二週三週くらいずれていた。
「俺は特に理由はない」
まさかの理由なし、だった。
「自分が努力していい大学に行ければ高校は関係ない。たまたまこの学校が楽して社長になれる方法があるから来ただけ」
つまり分かったのは、鷹良くんは相手じゃなくて社長目当てだってこと。
「とりあえず、どっちも‘恋人’目当てじゃないってことね」
鷹良くんも私と同じように思ったらしい。
「…」
私はそれに何も言い返せなかった。
確かにそれは紛れもない事実。鷹良くんの言う通りだ。
だけどなにかが引っ掛かる。うまく言えないけれど、このままじゃいけない気がする。



