「ただいま…」
結局、部屋に戻ったのは9時半頃だった。
入学式が終わってからずっと美海ちゃんと一緒にいたから、ついつい遅くなっちゃったみたい。
驚いたことに、鷹良くんが出迎えてくれた。
仲良くなろうと努力してくれているのかなと淡い期待を寄せるけど、そうじゃなかったみたい。
「遅い。俺は10時に寝たいの」
鷹良くんはもう寝巻きに着替えていて、いかにももう寝ますという格好。
「まだ9時半じゃん…それに、わざわざ私の帰りを待たなくても大丈夫だよ」
別にお前の帰りを待ってたわけじゃない、と鷹良くんは言う。そんなにうるさそうな顔をしなくてもいいのに。
「どうせ風呂に30分はかかるだろ。早く入って寝ろ」
10時に寝るだなんて小学生と同じだよ。そう反論したくなったけど、鷹良くんに怒られたくないという気持ちの方が勝った。
「…………わかった」
その日はそれ以上話すこともなく、ただ眠りについただけだった。



