その6



「なら、効率よく行くぞ。今日を以って、北野マユミとは別れる···。今後一切、接触しないと宣誓するんだ。”たらし”を職業としてるプライドがあるんなら、別れ際はシャキッとしろ!」


「…」


ダサ中年の迫力ある詰めに、マコトはあっさりと無言で頷いていた…。


「…先に言っておこう。オレはお前同様、ど腐れた男さ。…てめえの持つ能力を人のためになんぞ使う気なんか、ハナから放棄しちまって人の弱みに付け込んでる。…好みの女を見つけては弱みを透視して、己の欲望を満たすクソだよ。このマユミにしても”それ”だった。…その彼女からの願いだったんだ。そうとなっては、お前を排除するしかねえ。…だからバーターだ。オレもお前を脅してるからな。さあ、性根入れて答えろ。この女とは今日限りだ。いいな?」


「…わかった」


これで次第は決した。
後は儀式に過ぎなかったのだから…。


***


「…マユミ、そのスマホで録画しろ。…じゃあ、まず本名と生年月日、それに現住所だ…」


腕をキメられたままのマコトは、中年男の要求に従う他なかった。
その後は極めて短時間で済んだ。


そして10分後には、マユミの部屋からマコトは”静かに”去って行った。
”宣誓”の録画を残して…。


「…よし、これで言質は取れたな。もし、野郎がグダグダ言ってきたらオレのケータイに連絡しろ。最低限のカタはつけてやるからよう」


「ありがとう…、吉原さん」


「いや‥、いいさ。じゃあな」


やぼいアーミージャケット姿の吉原は、彼女にバイバイして玄関を出たのだが…。
ここで北野マユミの”栓”がポーンと抜けた…。


「待って!」


次の瞬間…、彼女は、吉原の片腕を抱きつくように両の手で引き留めた…。


***



「…吉原さん!あなた、これからも私にやった行為、続けるんですか?」


「ああ」


彼のリターンは即答だった。


「…あのう、そういう時の場…、私も同伴できませんかね?」


「はあ…??」


一転、吉原の目は点になっていた...。