その4


二人による決行は早かった。


翌週の火曜、夜‥、マユミの部屋を訪れたマコトに用意した金を渡すと、マユミはきっぱりと決別宣言をカレに突きつけたのだ。


片膝をたてた態勢でベッドを背にし、マコトはタバコを咥えたまま、マユミから受け取った封筒の中身を確認した。


「これが最後よ。もう、アナタにお金は渡さない決心したから…」


マコトは一瞬、眉間にしわを寄せて怪訝な表情を見せたが、それはすぐに涼しげな面構えにスライドし、タバコの煙を一気に吐き出すとマユミの目を数秒間、射るように見つめてから一声を発した。


「あのさー、マユミ…、アンタ、俺とは最初から嫌々だったって訳か?」


「夢中だったわ。つい最近まで。でも、見せかけだけの男にはもうこりごりなの。ってことで、そのお金でアナタとのカンケーは終わりにしたいのよ」


「おい…、冷静になれよ。オレはお前がかわいいんだ。もう少しは繋がっていようぜ、なあ…」


硬軟巧みなコトバは矢継ぎ早だった。
で…、その口の主、マコトはすかさずマユミのスカートの中に右手を潜らせていた。


「あっ…」


マユミは思わず甲高い声をあげ、太ももをピクンとさせてしまった。
そして、マコトはマユミの目をじっと食入るように、でも優しく見つめてくる。


***


”いやあ…、あれじゃあ、抜けきれない訳だわ。少々早いが、出張るか…”


クローゼットの中で”待機”していた吉原は、ここで躊躇わずに二人の前へ勢いよく飛び出して行った。


「わー、なんだー、あんたは‼」


言うまでもなく、マコトはから跳ね上がるほど驚いていた。
だが、吉原は間髪を入れない。


「うっせーよ、このクソ野郎が!マユミは今晩限り、テメーと別れるってんだからさ。見届けるんだよ、オレはようー」


「はあ…??」


マコトはマユミのスカートの中へ手を突っ込んだまま、あっけにとられていた…。