「あんな条件出して良かったのか?」

雅人はたった今、後輩が出ていった扉を見ながらそう聞いた。

「だって面白そうじゃん。冬里先輩の妹がどうやって3年生に挑むのか気にならない?」

「まあ……。でももし勝てなかったらどうすんだ?」

冬里先輩の妹を、悠也が手放したいと思うはずがない。

「大丈夫」

「なにかあてがあるのか」

「別に〜」

悠也が冷めてるであろうダージリンに口をつけ、案の定、冷たい、と呟いた。
当たり前だろ、持ってきてから時間がたってるんだから。そう雅人は文句を言おうと悠也の顔を覗き込んで────驚いた。

悠也が心から楽しそうに笑っていたから。

千里と話している時は上手く顔を隠されてしまって見えなかったが、こんな風に笑っていたのだろうか。
冬里がいた時以来、悠也がこんなに楽しそうに笑った事はなかったのに。


(海影の力は本当にすげーな)


雅人はさっき出ていった冬里先輩に似ていて綺麗で、だけどどこか抜けている後輩の顔を思い浮かべて苦笑した。


これから賑やかになりそうだ。