椎名くんって、なんだかどんなことも包み込んでくれるような安心感があるよね。
着いた更衣室で制服に着替えながら椎名くんのことを考える。
私は久世くんの周りにいるようなキラキラした女子じゃないけど、そんなの関係なしに笑いかけてくれたな。
傷跡が残らないかって心配してくれたし……
「優しいな、椎名くんって。」
時計を見ると、昼休みが始まってから20分も過ぎていた。
大変!桃ちゃんのこと待たせてるのに……
急いで教室に戻らないと。
ガチャ、と更衣室のドアを開ける。
教室へ向かおうと廊下を歩こうとして、だけどすぐに足を止めた。
「椎名くん?」
廊下の窓に背中を預けてスマホを見ていた椎名くんが、私の声で顔をあげる。

