(しおり)!」

 名前を呼ばれて、ドリブルしていた手を止める。
 胸の前で構えたボールを勢いよく押し出すと、ボールはまっすぐにキャプテンの手へと渡った。

「リバウンド!」

 キャプテンがシュートを放った瞬間、体育館に響き渡る大きな声。

 まだシュートが外れると決まったわけではないのに、"入らなかった"ときのために、選手たちは激しく身体をぶつけてポジションを競い合う。

 ……どうせ、入るのに。なんて無意味なことなんだろう。

 
 こんなことを思っている中途半端な自分は、ここに立つのにふさわしくない。そう分かっていても、心の中で生まれる気持ちはどうしようもなかった。

 ぼんやりしていると、わたしの肩に相手の選手がぶつかってきた。

 ……痛い。本当にやめてほしい。

 自分勝手な思考に堕ちていく。
 相手の選手は額に汗をかきながら、一生懸命わたしの身体をおさえようとしている。


(小柄なのに、すごいな)


 バスケが好きなのか、嫌いなのか。
 はたまたどちらでもないのか。

 分かりきっているはずの答えを、その表情から読み取ろうとしてしまう。