それからは視界を閉ざされ、
広がった暗闇の中で
聴覚だけを研ぎ澄ましていた。

春くんも今頃、隣でそうやって、
男の様子を密かに伺っているだろうか。

「…」

しばらくすると
それから、バスが発車する音が聞こえ

またしばらくすると
小刻みに揺れていたバスの振動が
徐々に大きくなっていって、

ガタガタと、激しい道のりに
差し掛かっているのだろう、というのが
分かった。

山道?

とにかく縦揺れが大きくて、
バスがひっくり返ってしまうんじゃないか
と思った程。

そして。

驚いたのは、
こんな激しい揺れの中。

私はいつの間にか

眠ってしまっていたらしかった、という事。