他校であるうちの学校にまでファンクラブがあるそんな有名な人とずっと何度も同じ電車に乗っていたんだ…。

普段、本にしか興味がなく本を持つ手元にしか視線が行かないから周りにどんな人が乗っているかだなんて全く意識していなかったことに気がついた。

真美ちゃんの話から彼が予想外に有名人だったことにとても驚いた。
ほんのわずかだが過ごした時間で感じた姿勢の良さ、凛とした姿は弓道をやっているからなのか。と一人で勝手に納得する。

「ほら!奈々ったら早く返信して!『私は遅刻しませんでした。あなたは大丈夫でしたか?』って!ちゃんと次の返信が来るように『(はてなマーク)』忘れないで!」

「あ…。うん。」

真美ちゃんのこういうあざといところがすごいと思う。
手をつないで欲しい時は『手が冷たいの。』と言うと大抵の男性は手を繋いで温めてくれるとか、好きな男の子には消しゴムを借りたなど小さなお願いほど、大袈裟に感謝すると喜ばれるなど、本の虫でしかない私には思いつかない様なことを教えてくれる。
言われた通り、メッセージの最後に『(はてなマーク)』をつけてメッセージを送信した。

すると、すぐに『既読』になり、

『ギリギリだったけれど遅刻しなかったよ。いつもどんな本を読んでるの?』

「返信早っ!これは仲良くなれるかもぉ~♪」

と、速攻で返信が来たので無関係ながらも真美ちゃんのテンションがさらに上がった。

『今朝読んでいたのは…』

と入力したところで、小説のタイトルをそのまま返信したところできっと恋愛小説何て言われても知らないだろう…。読んでいた本のジャンルを答えるべきなのか、具体的にタイトルを答えるべきか悩んでいる、とお昼休みの終了を知らせる予鈴(よれい)がなってしまった。

5時間目は物理。物理の先生は早めに教室にやってくるので、磐田君への返信はまだできていなかったが、スマホを没収されない為にも食べ終えたお弁当箱と一緒ににさっさとカバンにしまった。

 …まぁ、授業の後に返信すればいいか…。

と思ったのだが、その後返信するのをすっかり忘れていた。