「……そのっ……娼婦の方を呼ぶのは、待ってください。私が……私が、しますっ」

 ぎゅうっと胸の前で両手を握り込んで、自分を見上げるナトラージュをグリアーニは戸惑った様子で見下ろした。

「……君が、代わりを?」

「……私の責任ですので……ですが。どうか、彼には絶対に、言わないで欲しいんです」

「いや……どう言えば良いか……勿論、こういった状況だ。責任を感じるなとは、言わないが。君がそこまでする必要性はない……城で働いているナトラージュも、理解しているとは思うが、あいつは浮き名を流していて……一人くらい増えたって、どうという話でもない。それでも?」

 グリアーニはどうやって説得しようかを思いあぐねているようで、彼には珍しく言葉を詰まらせながらそう言った。

 とても複雑そうな、様子だ。もし、自分だって彼の立場であれば、そう言っただろう。どうにかして、責任を感じている恋人でもない女の子を思い留まらせようとしたはずだ。

 そうして、ナトラージュは決意を込めてゆっくりと大きく頷いた。

「……私……きっと、彼のことが、好きなんです。きっと……上手くはいかない恋だと思うんですけど、私のせいで彼が誰かとそういう事するのは……絶対に嫌です」