いつもは量を決められているので、こうして誰かの部屋で甘いものを食べられる時は、ナトラージュが怒りにくいのを知っているからだ。

 その様子を呆れた目で見て、ナトラージュは偶然さっき聞いてしまった事の真偽を確かめたくて、本人に聞いてみることにした。

「あ、あのっ。ヴァンキッシュ様って、女王陛下と……その」

 ナトラージュが口籠もって言えなくなっている言葉のその先を、彼は簡単に理解して苦笑した。

「……ああ。マーヴェリー卿も……あの男、本当に要らない事を言ったな……独身最後の、火遊びの相手に選ばれただけの話だ。女王の昔の男と言う……そういう肩書きを持つ男と付き合えば、優越感を感じると言う人も居るけど。ナトラージュは、興味はある?」

「いっ……いいえ! 全く! 全然!」

(……オペルの女王陛下と付き合っていたって、本当だったんだ! 思っていたより、もっともっと! とんでもない人だった!)

 大きな衝撃を受けている表情になったナトラージュを見て、ヴァンキッシュはふっと微笑み面白そうな顔をした。

「……誰かの情報が気になり始めると、恋のはじまりという可能性も高いよね。少しは僕に興味を持ってくれたら、良いな。可愛い召喚士さん」