「それでは、決まりだ。ナトラージュ。今夜はゆっくりと、眠るんだよ」

 思いあぐねたナトラージュが何か言う前に、有無を言わせぬように扉を開けて二人とも去って行ってしまう。

(……なんだか、強引な男共だな)

 扉が閉まった時から、また部屋に降りた沈黙を破り、今まで空気を読んで黙っていたラスが大きくため息をついた。

「……うん。でも。二人とも、優しいね」

 真面目な様子のナトラージュの頑なな態度を見たヴァンキッシュは、きっと一番問題のない方法で彼女を助けた。

 彼の従兄弟グリアーニ・リーダスは、見るからに口が堅そうだし職業柄信頼度も高い。彼から体調が悪くなったから、仕事の提出が遅れると連絡があれば、ナトラージュの師匠である導師アブラサスもすんなりと納得するはずだ。

(……ナトラージュは、本当に男に免疫がないからなー……なんか。俺、嫌な予感がするよ)

 手早くゆったりとした寝巻きに着替えてベッドの中に入ったナトラージュを見つつ、ラスは彼女の返事を特に求める様子ではなく呟いた。