喉が焼けて潰れてしまっているのか、ざらついた耳障りな声がする。その言葉を聞いたヴァンキッシュは、肩を竦めて目を細めた。

「見ての通り、僕はもう夜に一人でトイレにも行けない年齢ではなくてね。僕一人が、目的なんだろう。関係ない人質をすぐに解放して欲しい」

 特に躊躇うこともなく黒ずくめの一人は、あっさりと人質の縄を切った。ぱらりと切れた縄は地面に落ち、捕らえられていた男性は悲鳴をあげて走って逃げて行った。

 何の感情も見せずに無表情のまま、ヴァンキッシュは腰の剣を抜いた。その様子を見た、闇鴉達五人は顔を見合わせ、嘲るように言った。

「そのキラキラしい剣で、何をするつもりだ? まさかこの状況で、逃げられるとでも思っているのか? まぁ、無謀な奴は別に嫌いじゃない。女王への手土産に見せる時にも、ある程度弱っていた方が効果的だろう」

「商売道具にしているのは、口だけじゃなくてね。もし良ければ試してみるかい?」