ジェラルディンの落ち着いた声を聞きながら、またベッドの中と潜り込んだナトラージュの頭を彼女は撫でてくれた。

「山の中を、そんなに? 大変そう……」

「正騎士になるための、最終試験です。戦闘職ですから戦いが起きれば、最前線ですからね。戦場では、誰も言い訳など聞いてくれません」

「……ジェラルディンは……強いね」

 柔らかな上掛けを顔近くまで引き寄せながら、しみじみとそう言った。何年も厳しい訓練を受け見事女騎士となった彼女がそれまでに培ってきた努力を思えば、もう何も言えなくなる。

「弱くあっても生きていけるなら、その方が良いですよ。傍に居てくれる強い誰かに守って貰うことは恥ずかしい事ではありません。ところであまりの強さにこの国で鬼神とまで呼ばれ、割と顔も良い将来有望な上司が居るんですけど、一度会ってみませんか。お勧めです」

「……ジェラルディン。グリアーニ様のこと勧め過ぎ」

「たまには、定時に帰りたいです。出来れば、常に。良ければ、協力して貰えませんか」

 あくまで自分のためだという姿勢を崩さない言葉に、二人でクスクス笑い合った。ジェラルディンが促すように、また頭を撫でてくれたのでナトラージュはもう一度目を閉じた。