それから1週間後。

「えっ…なんですって?」

志津子と加奈子は、思わず耳を疑った。

「退院が決まりましたよ。おめでとうございます」

学の主治医は淡々と告げる。

「でも…危篤だったのでは?」

「ええ。しかし、奇跡的に回復しました。正直、我々もかなり驚いています。でも、通院は暫く続けてくださいね」

二人は茫然とする他なかった。

ましてや加奈子は、学がいつ死ぬかわからないのに仕事を休み続けるわけにもいかないと思い、退職してしまったのだ。

正社員でなかったのがせめてもの救いだろうか。

怠け者の加奈子も、ようやく本気で自立を決意した。

もう、あれほど素敵な王子様が現れることはないのだから、一生ひとりで生きていく覚悟まで決めて…。