志津子は内心、面倒な役回りだと思いながらも、学の弟妹に電話を掛け、学が危篤であることを伝えた。

学には、両親とも同じ弟妹と、父親の不倫相手との間に出来た腹違いの妹、計3人の弟妹がいる。

女にだらしない学の性格は、父親譲りなのだろう。

志津子は、東京在住の、自身の姉に学が危篤だと愚痴をこぼしていたら、志津子の姉夫婦も見舞いに来てくれることに。

長女の律子は、見舞う気などゼロだったのだが、律子の夫は善良な性格の為、

「危篤なら当然、行った方がいいよ!俺も、これが今生の別れになりそうなら、明後日、車で向かうから。律子は早く新幹線のチケット取りな?」

嫌で嫌で仕方ない律子だが、夫が好意でそう言うのに行かない訳にもいかず、渋々荷造りをすると、着払いでボストンバッグを実家に送りつけた。