そういえば前世ではこの季節に新入生が入学することは変わらないけれど、卒業する時期は少し変わっている。この学園では春に新入生を迎えて夏に入る前に卒業式を行う。だからわたしたちもこの夏に卒業を控えているのだ。


何故夏なのかと言われればそれは秋の社交界に参加するためだ。この国での大きな社交シーズンは春と秋。夏は暑いのでだいたいは避暑に行くし、冬はわざわざ王都まだ来て社交をするには雪の問題がある。四季がしっかりしているのよねぇ。


学んだことはすぐに実践したほうがいいだろうとはお偉い人の言葉で、わたしたちは卒業したらすぐに本番となる社交界にデビューすることになるのだ。個人的にはもう少し余裕があると嬉しいのだけど、まぁ詮なきことである。



「良ければお土産にクッキー、持って帰ります?甘くないの作ってきたんです」


「あぁ、頂こう」



果たしてわたしが作ったクッキーが癒しになるかはわからないけれど腹の足しにはなるだろう、とニコニコしながら全てのクッキーを差し出した。