「聖女様、俺の女になれ」

 『聖女様』と敬うような言葉を使いながら後半の命令口調は一体どういう領分なんですか。
 私の顎をくいっと上げて自身の目で私を捕まえるように見つめる彼は、にやりと笑って今度は私をパッと解放した。

「なんてな、まあ目的はもうほぼ達成されたし、いいだろう」
「目的?」
「ああ、お前をクリシュト国から奪うことが目的だったからな」
「なんで……」

 彼は私から離れて窓のほうに向かうと、こちらを向いて語り始める。

「ま、クリシュト国から聖女様を奪ったし勝手にあの国もつぶれるかもな」
「なっ! そんなことないっ! クリシュト国には国王もそれにユリウス様もいる! 私一人いなくても国がつぶれたりなんかしないわ」

 私が息を切らせながら一気に言うだけ言うと、彼は口元に手を当てて笑い始めた。

「く、お前っておもしろいやつだな。お前自分がどこに連れて来られたかわかってんのか?」