私がユリウス様と婚約した半月後、ユリウス様は正式に王太子となり次期国王となった。
 このことは隣国を含めて各国に知れ渡ることとなり、クリシュト国は「これからも安泰だ」という評判がついた。

 一方、私の聖女召喚を含めた元王妃であるアンジェラ様の所業が隣国のスパイの手引きがあったことを知り、王宮内には緊張が走っていた。
 そのことについて私を含めた、ユリウス様、国王、そしてユリウス様の側近でいらっしゃるアルベルト様が謁見の間で話しあっていた。
 すると、ユリウス様は私のほうを見て一瞬微笑むと、アルベルト様を私に紹介する。

「ユリエ、会うのははじめてだったね。この者はアルベルトという。私の側近で密偵なども兼ねている」
「アルベルトでございます。よろしくお願いいたします」
「アルベルト様、はじめまして。ユリエと申します」

 深い青色の髪色にサファイアのような美しい瞳、そして長いまつ毛に私は息を飲んだ。
 ユリウス様も王子様らしく見目麗しいけど、彼もまた違った品格の良さがあって、そして何よりユリウス様への敬意を感じられる。
 そしてユリウス様もまたアルベルト様のことをホントに信頼してることがわかる。
 挨拶が終わったところで、ユリウス様は国王に対して報告をはじめた。

「父上、先日申しました通りやはり隣国コーデリア国は何か企んでいる様子です」
「ああ、こちらでも確認した。アルベルト、コーデリア国の民衆の様子は?」
「はい、民衆はいつも通りの生活を送っております。ただ、民衆は自国の他国侵略を良く思っていないようで、侵略反対を掲げて王宮へと訴える者もいるようです」
「やはり、かなり暴走気味のようだな。以前はここまで無茶することはなかったが……」
「引き続き、アルベルトには密偵でコーデリア国に潜伏してもらおうと思いますが、いかがいたしましょうか」
「ああ、頼む。ただ、危険だと感じたらすぐに戻ってこい。いいな?」
「かしこまりました」

 アルベルト様は国王に跪き、胸の前に手を当てて頭を下げてると、立ち上がってそのまま退室した。
 残った国王は深く腰掛けて座りなおすと、ひじ掛けに手を置いてふうと息を吐く。