王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~

「久々じゃないか、坊ちゃん」
「その呼び方はやめてください」
「今日も抜け出してきたのか?」
「はい、今日は彼女を連れて」
「ほお? ついに婚約者でもできたか?!」
「え、その──」

 ユリウス様は少し顔を赤らめると、からかわないでくださいと言い残して私をテラスへと案内する。

「ここはやはり落ち着きます」
「はい、海も見えてとても綺麗ですね」

 紅茶を一口飲むと、心地よい風に乗って紅茶の香りもふわりと漂う。