「父上、あの……確かに私には長らく婚約者がいませんでしたが、なぜ今……?」
「理由の一つはコーデリア国へのけん制。エリクがいなくなって王子がユリウスのみとなったこの状況で次期国王に婚約者がいないのはまずい」
「それはそうですが……」
「それに二人ともお互いのことがまんざらでもないそうじゃないか」
「──え?!」

 王はニヤニヤと笑いながら、頬杖をついて私たちを眺める。

 確かに、私ここまで皆さんによくされているのに何もできてないし、もし役に立てるのならいいのかもしれない。

「ですが、ユリエはいつか帰らなければならないお方です。その方を我が国の事情で縛ってしまうのは……」
「ユリウス様がよろしいのであれば、私は構いません」
「ユリエ?!」
「私もこの国のお役に立ちたいです。正直なところ、私は今現代に帰りたい気持ちとこの国に残りたい気持ちの両方あります。この国が私を必要としてくださるのであれば、いくらでもこの身、使ってくださいっ!」

 この国に残りたいのは本当で、ユリウス様への想いを自覚したことで益々迷っている自分がいて、もしかしたらそんなフラフラで曖昧な気持ちでいるのは迷惑かもしれない。
 でも、今できることがあるのならば、役に立ちたい。
 だから……!


「私はユリウス様との婚約をお願いしたく存じます」


 こうして私とユリウス様は結婚日未定の婚約者となった──