初めてあなたを見た時、なんとも不思議な感情に襲われた。
 この国では珍しい黒髪を靡かせて優雅に王宮内を歩いている。
 その瞳は輝かしいブラウンで、美しくも爽やかなセレストブルーのドレスを身にまとっていた。
 「なんて綺麗なんだろう」と思った。
 今思えばいわゆる一目惚れだったのかもしれない──

 彼女が王宮内に突然姿を現すようになった数日後、じいじと私は私の自室で話をしていた。

「ユリウス様がご覧になった方は『リーディア・クドルナ』様と仰り、エリク様の婚約者だそうです」
「兄上の婚約者? あの方には別の婚約者がいたはずでは?」
「どうやら婚約破棄をして今のリーディア様を新たな婚約者にしたそうです」

 何か怪しい動きを感じるな。調べてみるか。

「じいじ、アルベルトに連絡を取ってそのクルドナ家を調べてほしい。私は兄上と念のため王妃様のほうも調べてみる」
「かしこまりました。すぐにアルベルト様に手紙を送ります」

 じいじがお辞儀をして私の部屋から退出したのを見送ると、私は作戦を練り始める。
 クルドナ家がどんな家柄、実態かは偵察のために王宮外にいるアルベルトが調べてくれるはず。
 問題は兄上と王妃様に私が近づけるかどうか。
 一度毒殺をされかけている以上派手には動けないが、二人の外出の時を狙って王宮を捜索しよう。