わたくしは両親を失くしたこともあり、王妃さまのご厚意で王宮に住まわせていただいております。
 そのわたくしの部屋に到着すると、二人でソファに腰をかけてお話を始めました。
 すると、隣に座ったエリクさまが両の手のひらに乗るほどの木箱をわたくしにお渡しになったのです。

「エリクさま、これは?」
「異国の渡来品でね、オルゴールというらしいんだ。このねじを巻くと音が鳴る」

 そう言ってねじを巻くと、箱から何とも言えない高く綺麗な音が鳴り響きます。
 わたくしはその音色をもっと聴きたくなって木箱に耳を近づけると、心地よいリズムを奏でてくれます。

「すてき……」
「これをリーディアに渡したくて」
「え? これをわたくしにですか?」
「ああ、受け取ってもらえるかい?」

 エリクさまは、まばゆいほどの微笑みと共に音が鳴り終わった木箱をわたくしに差し出しました。
 わたくしはそっとありがたく受け取ると、大事に胸元に近づけながらエリクさまにお礼を申し上げたのです。

 二人で過ごす時間はあっという間でエリクさまはご公務に戻られました。
 わたくしはとても名残惜しいですがそっと手を振ってお見送りをいたします。