その話を聞いて、お母さんはなんて不安な気持ちになっただろうって思った。
 知らない世界で一人、好きな人との子供と共に異世界に来てしまった事に気づく。
 私も偽りの記憶を植え付けられた知った時、誰が味方で誰が敵なのかわからなくて怖くなった。
 だからこそ、少しだけわかる。
 ──お母さんが、怖くて不安で仕方ない思いをしたってこと。

 俯く私にお母さんはコーヒーのおかわりを勧めてくれた。
 水筒のおかげで氷は一つだったのに、まだ冷たく感じる。

「お父さんとお母さんはね、学校で出会ったの」
「え?」
「お母さんは学生で、お父さんは先生。ふふ、憧れの先生だったのよ」

 意外な馴れ初めを聞いて私は少しだけ胸が躍った。
 そんな少女漫画みたいな話あるわけないと思ってたけど、本当にそれで好きな人ができて、さらに結ばれて……。

「あ! もちろん、付き合ったのは高校卒業してからね。卒業式の日に言ったのよ。好きですって」
「お母さんからだったの!?」
「うん、なんかさすがに娘に話すのは恥ずかしいわね。やめましょう」