ユリウス様と共にコーデリア国を去るときがやってきた。
 私は自分用に貸し出されていた部屋を後にしようとしたところ、ノックする音が聞こえて返事をする。
 部屋に入ってきたのはレオだった。

「レオ様……?」
「もう帰るのか」
「はい、本当にお世話になりました」
「いや、迷惑かけたな。いろいろ」
「いいえ! こちらこそレオ様には良くして頂きました。ありがとうございました」

 お辞儀をして顔をあげようとした瞬間、がばっと勢いよく抱きしめられた。

「レオ様っ!?」
「なあ、本当に俺の妃にならないか?」

 私の髪ごと頭を支えて、もう一つの手に腰を強く引き寄せられている。
 彼のあたたかさを感じた。

 最初は彼のことを敵だと思って苦手だった。
 だけど、彼の優しさをどんどん知っていった。
 妹思いで、私のことも大切にしてくれて……。

 でも……。

 私はそっと彼の胸を押し返して目を見つめる。

「ごめんなさい、私はあなたの妃になれない。私は……」
「あいつか」

 「あいつ」がユリウス様のことだとわかって、私はゆっくりと頷く。